杏雲堂病院からのお知らせ

杏雲堂病院病理部のフェノーム研究が、Springer-Nature社の「Communications Medicine」誌に掲載されました

本研究は、杏雲堂病院、佐々木研究所、東京医科大学、愛媛大学、日本電子、兵庫県警察の共同研究です。 
 
糖尿病患者さんは、体内の血糖(グルコース)レベルを最適に保つためにインスリン製剤 (註1)を使用しています。 インスリン製剤を同じ部位に繰り返し注射すると「インスリンボール」と呼ばれる不溶性の構造体(アミロイド;註2)を形成します。今回、糖尿病患者さんのインスリンボール内に生物界で最大の100 μmの銅の塊を発見しました。この発見は、加齢に伴った蛋白質の誤った畳み込みに起因する糖尿病、アルツハイマー病、あるいは癌などの疾患に係わる機序解明や新しい予防方法の開発に繋がるかもしれません。生物界の謎としては、アミロイドがなぜ金属を誘導するのか、その機序を解明する新たな一歩となります。

論文タイトル: 
Structural analysis of a micron-sized deposit of Cu0 in an insulin ball from a person with diabetes

註1 インスリン製剤は、遺伝子組み換えを行って合成した糖尿病の治療薬で血糖調整を実現するための重要な薬剤です。インスリン製剤には超速効型や長時間持続型など、治療目的に応じた色々な種類があります。 
 
註2 アミロイドとは、誤った折り畳みを起こした不溶性の線維状の構造体です。正常な蛋白質は決められた立体構造に折り畳まれ、本来の機能を発揮しますが、加齢、あるいは急激な環境変化などが原因で折り畳みが崩れて、隣接する分子同士が固まった不均一な構造体を形成します。病的な蓄積の代表例としては、アルツハイマー病の原因物質となりうることが知られています。 
 
病理診断科科長 岩屋啓一

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